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早稲田大学
創造理工学部総合機械工学科/創造理工学研究科総合機械工学専攻
輸送機器・エネルギー材料工学研究室

吉田誠研究室





銅合金鋳造欠陥予測

イントロダクション

     銅合金は、水中や海水中での耐食性が高いことから、水道バルブなどの給水設備に使用されています。水道用バルブの製造方法の一つに鋳造があり、これは溶かした金属を鋳型に流し込んで固める技術で、金属が冷えて固まるときに収縮します。この収縮が金型によって拘束されると、脆い金属塊に応力が発生し、割れなどの欠陥が発生することがあります。特に、近年開発された鉛フリーの銅合金や青銅では、このような鋳造割れが発生しやすく、適切な鋳造方法の工夫が困難です。

     このような鋳造欠陥を生じない鋳造法を考案するために、時間とコストがかかる鋳型の試作を何度も繰り返す必要がありました。 しかし、近年ではFEMを用いた鋳造シミュレーションによる予測が徐々に主流になってきています。

     そこで本グループは、鋳造シミュレーションにより銅合金の鋳造欠陥を予測することを目的としました。また、鋳造シミュレーションの結果と実際の鋳造結果を比較することで、シミュレーションの有効性を検証します。 対象合金は6種の広く使用されている黄銅と2種のビスマス系鉛フリー青銅のJIS CAC 902です。






実験


     鋳造シミュレーションに必要な固液共存域での機械的性質は、当研究室が開発した半固体引張試験装置を用いて取得しました。 図.1に半凝固状態で得られる応力-ひずみ曲線の一例を示します。



Fig. 1 半凝固状態で得られる応力ひずみ曲線

     実際の鋳物形状と欠陥発生位置を図2に示します。このモデルはシミュレーションで使用されたモデルと同じであり、実験で得られた結果はシミュレーション結果を検証するために使用されます。 鋳造実験では、鋳物や金型の温度履歴も測定しました。



Fig. 2 実験で判明した鋳物の形状と鋳造欠陥の位置

     1.で説明したように、実験で得られたC2800系黄銅の機械的性質から導出された弾塑性構成式を用いて鋳造シミュレーションを実施しました。解析の熱伝達係数は、C280系黄銅のダイカスト試験の冷却時の温度履歴に基づいて調整しました。 解析結果から、凝固時に発生する等価塑性ひずみ(Hot Tearing Indicator、HTI)を計算することで鋳造欠陥の発生位置を算出・予測し、 結果を図3に示します。



Fig. 3 HTI分布





結論

鋳造実験とシミュレーション結果を比較すると、欠陥の発生位置はほぼ一致していました。 シミュレーション結果の精度をさらに向上させるには、鋳物の粘性挙動を考慮する必要があります。






出版物

  1. Akira Matsushita, Tomoaki Nakazawa, Toshimitsu Okane, Makoto Yoshida, Crack prediction for a partially solidified lead-free bronze casting using thermal stress analysis, Journal of Materials Processing Technology 249 (2017) 46-56
  2. Naoki Kasuya, Tomoaki Nakazawa, Akira Matsushita, Toshimitsu Okane, Makoto Yoshida, Mechanical Properties of a Partially Solidified Cu-Zn Alloy, Metall and Mat Trans A (2016) 47: 1661
  3. Akira Matsushita, Tomoaki Nakazawa, Toshimitsu Okane, Makoto Yoshida, Prediction of hot tearing for a partially solidified bismuth bronze by using finite element method analysis, 72nd World Foundry Congress, WFC 2016. The WFO (The World Foundry Organization Ltd), 333-334





Flow simulation of Cu alloy (ProCAST)







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