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早稲田大学
創造理工学部総合機械工学科/創造理工学研究科総合機械工学専攻
輸送機器・エネルギー材料工学研究室

吉田誠研究室





砂型反力予測

イントロダクション

     砂型鋳造は、ディーゼルエンジンのシリンダヘッドなどの鋳鉄製品、鋳造用金型、工作機械などの製造に用いられる。その際、鋳造部品の肉厚差による冷却速度の差や砂型の反力により、残留応力や変形が発生します。砂型反力とは、鋳造品が砂型内で冷却収縮する際に、収縮を抑制するために砂型から受ける反力のことである。図.1にフランジ付き鋳物製品を示します。鋳物の熱収縮が砂型の反力によって拘束されると、図.1の左下に示すように鋳物に永久変形が発生します。その結果、最終製品に残留応力が発生し、目標寸法との不一致が生じます。





Fig. 1 鋳物に対する拘束力の影響


これらの問題を解決するために、以下のような対策が講じられています。

  1. 熟練工による予測と制御
  2. 焼鈍処理による残留応力の除去

しかしながら、これらの対策には以下のような問題点も存在します。

  1. 鋳物の形状が複雑な場合は予測が困難である点
  2. 膨大な時間と費用がかかる点

     そこで、新たな解決策として、CAE(Computer Aided Engineering)による熱応力解析によって変形や残留応力を予測・制御する手法が徐々に主流になりつつあります。当研究室では、砂反力の影響を考慮した熱応力解析を行うことで、鋳物内部の残留応力をより正確に予測することを目指しています。






実験


     熱応力解析において砂型反力を考慮した先行研究はいくつかありますが、注湯開始から砂型振出しまでの実験結果とシミュレーション結果を動的に比較した先行研究はありません。砂型反力の発生メカニズムを動的に比較することで、解析上の砂型をモデル化することで実際の挙動をどのようにシミュレートできるかを評価します。





Fig. 2 鋳物にかかる荷重と鋳物の収縮を測定する装置の概略図


     まず、湯口から溶湯を流し込むと、発泡スチロール製の模型が焼き切られ、模型状の鋳物が形成されます。このとき、溶湯が鋳込み部に流れて凝固するため、鋳込み部の端部がクランプ部に拘束されます。冷却過程で他端のフランジ部は砂型の反力を受けながら収縮し、鋳物の収縮量はフランジ部に鋳込まれた石英ロッドによってLVDT(Linear Variable Differential Transformer)に伝達され連続的に測定されます。このようにして、鋳物が受ける砂型反力と鋳物の収縮量が動的に測定されます。

     熱応力解析には有限要素解析ソフト「Abaqus」を使用(以下に動画を掲載)。まず、熱解析によって鋳物の冷却過程を計算し、実験で得られた温度履歴と一致するように温度履歴を調整し、こうして得られた温度履歴を応力解析に用いる。応力解析では砂型の挙動を正確に表現するために、砂型の数理モデル化(完全弾性モデル、弾塑性モデルなど)を最適化します。





Fig. 3 実験装置のシミュレーションメッシュモデル




Fig. 4 機械解析に使用される合金の温度依存性真応力-塑性ひずみ曲線




Fig. 5 砂型からの拘束力のシミュレーションと実験の比較





動画


  1. 鋳造熱分析





  2. 砂型熱分析





  3. 鋳造応力解析





  4. 砂型応力解析





  5. 鋳造実験1




  6. 鋳造実験2









結論

     現在、私たちのグループでは試験装置の改良やデータの取得を継続的に行い、鋳鉄について上記と同様の実験を行っています。同時に砂の力学特性を取得し、それをコンピュータシミュレーションに適用して評価・精度向上を図ります。






出版物

  1. Y. Motoyama, H. Takahashi, Y. Inoue, K. Shinji, and M. Yoshida, “Development of a device for dynamical measurement of the load on casting and the contraction of the casting in a sand mold during cooling,” Journal of Materials Processing Technology, vol. 212, no. 6, pp. 1399-1405, Jun. 2012.
  2. Y. Inoue, Y. Motoyama, H. Takahashi, K. Shinji, and M. Yoshida, “Effect of sand mold models on the simulated mold restraint force and the contraction of the casting during cooling in green sand molds,” Journal of Materials Processing Technology, vol. 213, no. 7, pp. 1157-1165, Jul. 2013.
  3. Y. Motoyama, H. Takahashi, Y. Inoue, K. Shinji, and M. Yoshida, “Dynamic measurements of the load on castings and the contraction of castings during cooling in sand molds,” Journal of Materials Processing Technology, vol. 213, no. 2, pp. 238-244, Feb. 2013.
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