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早稲田大学
創造理工学部総合機械工学科/創造理工学研究科総合機械工学専攻
輸送機器・エネルギー材料工学研究室

吉田誠研究室





超合金鋳造欠陥予測

イントロダクション

      Ni超合金は、ガスタービンブレードや航空機ジェットエンジンなど、高温での強度や耐食性が要求される製品の材料として使用されています。 これは、Ni基超合金が強度の逆温度依存性を示すγ'相を強化相として有することに起因します。 さらに、γ' 相は母相の γ 相と極めて密着していることが知られており、そのおかげで Ni 基超合金は常に「天然複合材料」と表現されています。

      しかし、精密鋳造は部品ひとつを作るのにも非常に時間がかかる方法です。そのため、凝固割れなどの鋳造欠陥が発生すると生産性が低下し、コストが上昇してしまいます。通常、鋳造割れは熟練の技術者に合わせて金型の設計を変更することで回避されてきましたが、熟練工の減少によりそれも困難になりつつあります。この問題の克服を目指して、私たちのグループでは凝固亀裂の発生を予測するコンピュータシミュレーションに注目してきました。





Fig. 1 一方向凝固材(左)または単結晶材(右)で製造されたタービンブレード





実験


     凝固割れの原因については諸説ありますが、凝固温度域と呼ばれる温度範囲で欠陥が発生することが一般的に認められています。したがって、凝固割れをコンピュータでシミュレーションするには、Ni超合金の固液共存状態(凝固温度域における固体と液体の混合状態)における機械的性質が必要となります。

     本研究では、高周波誘導加熱装置(図2)を用いてNi超合金の試験片を加熱し固液共存状態で引張試験を行い、機械的性質を取得しました。



Fig. 2 高周波加熱装置を用いた引張試験装置の概略図


     この引張試験装置は試験片の下部を自由にし、ナットと治具の蓋との接触により張力を発生させるため、試験片の加熱による圧縮応力が発生せず熱膨張します。ひずみについては、試験片にあらかじめマーキングをしておき、そのマークの動きを高速度ビデオカメラで連続的に追跡しマークの変位からひずみを算出します。以下に、今回の研究で得られた応力-ひずみ曲線の一例と温度ごとの引張応力と破壊ひずみを示します。





Fig. 3 1167℃における応力-ひずみ曲線℃




Fig. 4 引張応力、亀裂発生ひずみと温度の関係





結論

     私達の研究室では、Ni超合金の固液共存状態における機械的性質を求める手法の確立に成功しました。 今後の研究として、実際の物理現象を計算機シミュレーションで再現できる構成方程式の定式化に取り組んでいます。 さらに、コンピュータシミュレーションの信頼性をさらに向上させるために、固液共存状態における合金の粘性(クリープ)特性も研究されます。






出版物

  1. S.Ogino, T.Ohashi, N.Kasuya and M.Yoshida, “Tensile Rate Dependency of Mechanical Properties of Inconel 718 Nickel-Based Superalloy around Solidus Temperature” J. Japan Inst. Met. Mater, Vol. 77, No. 5 (2013), pp. 170-173
  2. T.Ohashi, R.Goto, K.Muto and M.Yoshida, “Mechanical Properties of Inconel 718 Nickel-Based Superalloy around Solidus Temperature” J. Japan Inst. Metals, Vol. 76, No. 2 (2012), pp. 148-154
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